2021年05月07日

真理と美を愛する精神〜民芸運動の父・柳宗悦〜

高崎哲郎氏が、柳宗悦について、我孫子での民藝に向かう変化の兆しをその生まれ、人減関係などを通して次のように書いていたので、紹介しておきたい。


戦前、手賀沼周辺(今日の千葉県我孫子市)の閑静な高台に著名な作家、芸術家、学者らが居を構えていていた。「手賀沼文化人」である。「手賀沼文化人」の中で、私にとって、その豊饒な多方面にわたる天才性ゆえに最も論じにくいのが柳宗悦(1889〜1961)である。だが、柳宗悦の高邁な哲学的かつ芸術的精神は後世に伝えるべきである、と考える。宗教哲学者、思想家、美学者、文学者そして、それよりも「民芸運動の父」として知られる人である。

大正期、東京から常磐線で1時間足らずの田園地帯に広大な自然の広がる沼畔があって、東京の作家、画家、知識人らが「都会の喧騒から離れた思索の地」として目をつけた。イギリス人陶芸家バーナード・リーチが柳邸に仮寓し、日英の友情の絆を深め、浜田庄司との出会いもここ我孫子の地だった。我孫子の地は、宗悦にとって妻兼子との新婚時代を過ごした地であるとともに、初めて自らの家庭を築いた地、つまり家族の絆を築いた場所である。「白樺」同人である志賀直哉、武者小路実篤を我孫子に導き、生涯にわたる絆をここで結んだ。柳宗悦にとって我孫子は「出会い」と「絆」の地であった。

民芸運動の指導者・柳宗悦の夫人は声楽家・兼子、柳の伯父にあたる東京高等師範学校(東京教育大学を経て現筑波大学)校長・柔道家・嘉納治五郎、他に、中勘助、滝井孝作、「朝日新聞」記者・文明評論家杉村楚人冠など、日本の代表的作家や思想家、芸術家たちが暮らしていた。

柳は学習院高等科のころ、同級生と同人誌「白樺」を創刊した。紙面の美術面を主に担当し、宗教哲学、心霊学についての論文を相次いで寄稿する。「科学と人生」(1911)を東京帝大哲学科在学中に刊行する。1913年、同大哲学科を卒業し、翌年、東京音楽学校(現東京芸大)卒の声楽家・中島兼子と結婚する。恋愛結婚であった。

柳は学生時代からイギリスの詩人・画家ウィリアム・ブレークに深く傾倒し、我孫子に来た1914年、「ウィリアム・ブレーク」を出版した。そして、神秘主義の研究は宗派を超え「宗教とその真理」(1919)、「宗教的奇蹟」(1921)と順を追って研究をしていた。

しかし、我孫子に転居した9月に朝鮮在住の浅川伯教が来訪、つづいてその弟・巧の兄弟と親交を結び、朝鮮を数次にわたって旅行し、日本の朝鮮政策を批判する文章を発表した。さらに1922年には光化門取り壊しを聞き知って、反対の文章「失はれんとする一朝鮮建築のために」を雑誌「改造」に発表した。1919年の朝鮮の独立運動弾圧に対して、有識者が声を上げぬのに業をにやして、「朝鮮人を想う」、「朝鮮の友に贈る書」を発表。1923年の関東大震災での朝鮮人虐殺を悲しみ、1924年にはそれまで集めていた朝鮮美術を携えて京城景福宮緝敬堂(しゅうけいどう)に朝鮮民族美術館を開設した。

我孫子から転居後には、「宗教の理解」(1922)、「神に就いて」(1923)を経て、戦後、仏教論「南無阿弥陀仏」(1955)に向かい、初期のキリスト教から仏教(主に浄土真宗)に関心が移る。両者に通底するものを追い求め続けたことは後年の「神と仏」(1956)に明らかである。白樺派の彼らの精神に通底するものは知識人としてのヒューマニズムまたはリベラリズムと言っていいだろう。この水と緑の豊かな湖畔は彼ら知識人に静寂と思索の場を与え、代表作や秀作を生ませたのである。

1926年、陶芸家浜田庄司、同河井寛次郎とともに高野山を旅して「日本民芸美術館」設立の構想を得て、設立趣意書を発表した。すぐれた器の収集や実作の調査に乗り出し、1931年に雑誌「工芸」を創刊して1949年までに120冊を出した。これらの冊子は、軍国主義に転落していった日本にあって、柳の守ったけじめを示している。大原孫三郎から寄付を得て1936年に日本民芸館を創設した。

敗戦後の1948年京都の相国寺で行った講演「美の法門」は美と醜の区別を超えて世界を見渡す視野の成立を説いて、仏教の信仰に根を下ろす美意識のあり方を示した。これは「妙好人因幡の源左」(1950)、「仏教と悪」(1958)、「心偈」(1959)に連なる仕事である。
救いを求める庶民と仏教の在り方を常に問うた。


参照HP:https://www.risktaisaku.com/articles/-/4459?page=2


posted by その木なんの気、柳の気 at 23:33| 東京 ☔| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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